和泉市府中町で植え込みに潜むアシナガバチを駆除しました。
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娘の願いを乗せた電話と、植え込みの難敵――時限爆弾のような緊張を越えた完全駆除の記録
第一章:携帯が苦手な父と、離れて暮らす娘の祈り
「もしもし、【家の110番】さんですか? そちら、ハチの駆除はされていますか?」
和泉市からかかってきたその電話の向こうからは、どこか自信なさげで、おそるおそる言葉を選ぶような、年配の男性の声が聞こえてきた。
「もちろんです! ハチの駆除なら何でもお任せください。ちなみに、当社のホームページをご覧になってのお電話ですか?」
そう尋ねると、男性は少し苦笑いしながらこう答えた。
「いやぁ、私はパソコンとか携帯電話を使いこなす事がからっきしダメでね。近所に住んでいる娘に頼んで、代わりに探してもらったんですよ」
なるほど、それですべてが腑に落ちた。娘様に言われるがまま、不慣れな電話機を手に持ってかけてきたのだから、緊張して自信なさげな雰囲気になって当然だ。
「ご主人様、どうぞご安心ください。【家の110番】は地域密着の地元の業者です。お見積もりも無料でしっかりとご説明します。まずはすぐにお伺いして、現場の状況を確認してみましょう!」
私のその言葉に、電話の向こうの緊張が少し和らいだのが分かった。
「お手数をおかけします。よろしくお願いします」
私は即座に道具を積み込み、車を発進させた。和泉市内の現場までは、ここから20分とかからない距離だった。
第二章:閉じ込められた日常と、危険な植え込みの罠


現場に到着すると、ご主人様が玄関先で待っていてくださった。
「わざわざありがとうねぇ。今の世の中、何でもスマホやらパソコンやらで物事が済むから、私のような人間はどうしてもついていけなくて……困った時はいつも娘に頼りきりなんですよ」
恐縮しきりのご主人様に挨拶を返そうとした瞬間、私は思わず声を張り上げた。
「あ、ご主人様、そこ! 動かないでください、危ないです!」
私の立っているすぐ横の植え込みから、数匹のアシナガバチが慌ただしく出入りしていたのだ。
問題の植え込みは、玄関から表の門扉へと向かう動線の真横に位置していた。つまり、家に出入りするたびに必ずこの植え込みの前を通らなければならない。ハチと人間が「鉢合わせ」になるのは時間の問題だった。これまでの間、刺されずに済んでいたのが奇跡としか言いようのない悪条件だ。
「そうなんです……。娘から、『業者に駆除してもらうまでは絶対に外に出てはダメ』ってきつく言われてしまってね。毎日の散歩もずっと控えて、ここ2、3日は家に閉じこもりきりだったんですよ」
その言葉の端々に、離れて暮らす父親の身を心底案じる娘様の切実な想いが滲み出ていた。大切な父親を危険から守りたい一心で業者を探し、外出制限まで言い渡した娘さんの優しさと心配りが痛いほど伝わってくる。
「お父さん、もう大丈夫ですよ。今日からまた安心して散歩できるように、私がこの脅威をきれいに取り除きますから!」
私はそう力強く約束し、駆除作業中の安全を確保するため、作業中は窓をすべて閉め切り、家の中で待機してもらうようにお願いした。
第三章:時限爆弾の配線を解除するような、極限の緊張感





さあ、問題の植え込みだ。ここから1匹たりとも逃すことなく、完全に駆除するにはどうすべきか。
巣の本体は、生い茂る枝葉が複雑に絡み合った奥深くにぶら下がっている。このまま上から無闇に薬剤を散布しても、遮蔽物となる枝葉に邪魔されて薬が届かず、逆上したアシナガバチを飛び立たせてしまえば、一気に厄介な事態へと発展してしまう。
ここは、一網打尽にするために「養生シート」で植え込み全体を完全に包み込むしかなかった。
しかし、これほど生い茂った植え込みの養生は、プロの目から見ても極めて難易度が高い。手間がかかる上、枝葉に少しでも触れようものなら、その振動がダイレクトに巣へ伝わり、ハチたちが一斉に臨戦態勢をとってしまう。
何度も頭の中で手順を組み立て、脳内シミュレーションを繰り返す。
複雑に入り組んだ枝葉に、隙間ができないよう慎重に養生シートを被せていく。ほんのわずかでも枝が揺れた瞬間、シートの向こう側でアシナガバチたちが「ビクッ」と一斉に反応する気配が伝わってきた。
まるで、一歩間違えれば爆発しかねない「時限爆弾の配線」を解除しているかのような、息が詰まるほどの緊張感が全身を駆け巡る。額から汗が滝のように流れ落ちるが、拭っている暇はない。
「……よし、完璧だ」
危険で過酷な作業だったが、細心の注意を払ったおかげで、どうにか隙間なく植え込み全体を包み込むことに成功した。もう、中のハチたちが外へ逃げ出す場所はない。完全な「袋のネズミ」だ。
私は狙いを定め、一気に専用の薬剤を噴射した。
予想通り、密閉されたシートの中でパニックを起こしたアシナガバチたちが一斉に飛び散るが、行き場を阻まれて次々と力尽き、シートの底へと落ちていく。
内部の安全が確保されたところで、伸びきった枝葉を少し間引き、奥深くに隠れていた巣を根元から丁寧に取り除いた。最後に、周辺一帯へとたっぷりと忌避剤を散布する。
第四章:安心のバトンと、次の戦いへの覚悟



作業を終えて周囲を見渡すと、伸びきった植木や雑草、そして長年放置されていた段ボール箱などが散乱していた。これらはアシナガバチにとって、格好の営巣地となり得る「宝庫」だ。
娘さんの深い心配に応えるため、そしてお父様がこれからも安心して暮らせるように、私は怪しいと思われる場所を隅々までくまなくチェックした。幸い、他の場所には新たな巣の気配は見当たらなかった。
養生シートを慎重に片付け、家の中で待機していたご主人様を呼ぶと、窓を開けたお父様は心からの満面の笑みを浮かべて迎えてくれた。
「お父さん、これで安心してください。もう外を歩いても大丈夫ですよ。ただ、念の為あと2、3日は戻りバチに少しだけ気をつけてくださいね」
私の言葉に、お父様は嬉しそうにうなずきながら言った。
「いやあ、本当に助かりました……! 実は駆除してもらっている間も、心配性の娘から何度もスマホに電話がかかってきてね。『どうなった? 無事に終わった?』って。今から『もう大丈夫だよ、きれいにしてもらったよ』ってすぐに連絡してやります」
その笑顔を見た瞬間、胸の奥が熱くなった。
お父様の安全を守れたことはもちろん、離れた場所で不安に気をもんでいた娘様の心労を取り除き、親子の安心な日常を取り戻すお手伝いができたこと――これこそが、ハチ駆除のプロとして最高のやりがいであり、何ものにも代えがたい「駆除冥利」に尽きる瞬間だった。
道具を片付け、車に乗り込む。
空を見上げれば、日中の太陽はさらに勢いを増し、眩しいほどの強い日差しがアスファルトを照りつけていた。
これからまだまだ気温が上がり、過酷な暑さとの戦いが続く。しかし、私の心は不思議と澄み切っていた。気合いを入れ直し、私は次の現場、次なる闘いへと向けてハンドルをしっかりと握りしめた。
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