貝塚市清児にて、トレリスに営巣されたスズメバチの巣を駆除してきました。
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トレリスの奥に潜む斑模様の恐怖――貝塚市の日差しの中で繰り広げる、スズメバチとの静かなる知恵比べ
第一章:アサガオの茂みに潜む「縞模様」の来訪者
「そちら、【家の110番】さんですか……? すみません、今すぐ来ていただくことはできますか……!」
スマートフォン越しに聞こえてきたのは、切迫した焦りと不安に満ちた女性の声だった。
お話をうかがうと、庭に面した大きな掃き出し窓のすぐそばに、日よけ目的で立てかけた園芸用の柵(トレリス)があり、そこには色鮮やかなアサガオのツルが青々と繁り、見事な緑のカーテンを作り上げていたという。
「今日はそのアサガオのお手入れをしようと思って、茂みに少し近づいたんです。そしたら、その隙間から突如として大きなハチが猛スピードで飛び出してきて……! とにかく体が大きくて、動きがものすごく素早くて……怖くて近づけないんです!」
電話口の女性はハチの正確な種類までは分からない様子だった。
そこで私は、ハチの特徴を冷静に把握するため、巣の見た目について尋ねてみた。
「奥様、落ち着いて聞いてくださいね。そのハチの巣は、どのような形をしていますか?」
「えっと……丸っこくて、なんだか表面に綺麗な『縞模様(マーブル模様)』みたいな柄がついているんです……」
丸みを帯びた球体状の巣に、あの特有の複雑なマーブル模様――それは間違いなく、凶暴性で知られる「スズメバチ」の巣にほかならない。
「奥様、それはスズメバチの巣です! アサガオの手入れをしようとして近づいたことで、ハチたちは自分たちの城が攻撃されたと勘違いして激しく威嚇している状態なんです。今は非常に興奮していますから、お庭でのお手入れは一旦中止して、すぐに窓をしっかりと閉め切って室内へ避難してください!」
私の緊迫した口調に、奥様は「分かりました……すぐに入ります……!」と答え、電話を切った。
現場はここ貝塚市内。土地勘のあるルートを考えれば、車を飛ばせば20分以内で余裕で到着できる距離だ。
「よし、一刻も早く現場へ急ごう!」
私はすぐに道具を車に積み込み、貝塚市の住宅街へ向けてアクセルを踏み込んだ。
現場に到着すると、出迎えてくれた奥様はホッとした表情を浮かべつつも、まだ不安の余韻が残る顔つきで深々と頭を下げてくださった。
「急な、しかも無理なお願いだったのに、こんなにすぐに来ていただいて本当に助かりました……!」
「いえいえ、無茶にお手入れを続けて刺されてしまう前にご連絡をいただけて、本当に良かったです!」
お庭に案内してもらうと、大きな掃き出し窓の脇に立てかけられたトレリスには、青々としたアサガオのツルや葉が幾重にも複雑に絡み合っていた。その緑の茂みの奥から、数匹の大型のスズメバチが不穏な羽音を立ててパトロールするように飛び交っている。
これまでは一度もハチの巣を作られた経験がなかったという奥様は、「まさか、ついに我が家にも……」と、信じられないものを見るようなショックの色を隠しきれずにいた。
第二章:緑の要塞と、計算された「間引き」の攻防



さっそく、駆除の準備に取り掛かることにする。
防護服の上下をしっかりと着用し、ヘルメットと保護面を装着してトレリスの前に立った。
問題の巣は、繁ったアサガオのツルや葉の「最も奥深い場所」にぶら下がっている。理想を言えば、巣の出入り口(フライトホール)めがけて一気に薬剤を直撃させたいところだが、この生い茂った緑の壁が邪魔をしていて、そのままでは狙いを定めることが全くできない。
かといって、焦ってこの緑のカーテンを強引に引き剥がしたり、隙間から無理やり薬剤を噴射したりすれば、いたずらにスズメバチたちを激昂させ、周囲へと飛び散らせてしまう危険性が高い。最悪の場合、パニックを起こしたハチたちが家屋の方へ雪崩れ込み、室内や近隣へと逃げ出して大惨事になりかねないのだ。
「……ここは、どれだけ時間がかかろうとも、慎重にいくしかない」
私は熟考の末、一つの戦術を選んだ。焦る気持ちをぐっと抑え、スズメバチたちに警戒されないよう、少しずつ、ゆっくりと、巣の出入り口へダイレクトに薬剤を撃ち込めるだけの視界と射程距離を確保するため、手前のツルや葉を「間引いて」いくしかないと判断した。
しかし、現実はそう甘くはなかった。
剪定ばさみを手に取り、そっとツルに近づけたその瞬間、巣を守るスズメバチたちは振動を敏感に察知した。出入り口から次々と数匹の働きバチが顔を覗かせ、辺りを威嚇するようにキョロキョロと探し回る。
さらに運悪く、狩りに出ていた働きバチたちが次々と巣へと帰還してくるタイミングも重なり、私の周囲は一気に緊迫した空気に包まれた。
チョキ、チョキ……と、葉を一枚切断するたびに巣へと振動が伝わり、そのたびに数匹のハチがブンブンと羽音を立てて巣の周りを這い回る。
汗がダラダラと防護服の中で噴き出し、視界が曇る。しかし、ここで絶対に焦ってはならない。一斉に巣から飛び立たれてしまっては元も子もないのだ。スズメバチの警戒心が少し和らぐのを待ちながら、息を潜めて時間をかけ、何度も何度も間隔を開けながら少しずつツルを刈り取っていく。
防護服の密閉空間の中での細やかな神経を使う作業は、想像以上に体力を消耗し、全身から滝のように汗が流れ落ちていく。
それでも諦めず、数十分かけて慎重に作業を続けた結果――ついに、丸っこいマーブル模様の巣の出入り口が、ぽっかりと綺麗に視界の中にむき出しになった。
「よし……! ここまでセッティングできれば、もうこちらのものだ」
真夏日の暑さと緊張感で汗だくになった防護服のジッパーを一旦下ろし、私は短く小休憩を取って水分をしっかりと補給した。荒くなった呼吸を整え、頭を冷やす。
「さあ、いよいよ勝負の本番だ!」
第三章:一網打尽の瞬間と、見えない死角の徹底捜索



再び気合を入れ直して防護服を着込み、先ほど作り出した隙間からむき出しになった巣へと静かに近づく。
時間をかけて完璧な環境を整えたのだ。ここで迷う必要は一切ない。私は噴射ガンのトリガーを強く引き、一直線に巣の出入り口めがけて強力な薬剤を送り込んだ。
「プシューーーーーッ!!」
勢いよく噴き出した薬剤の霧は、迷うことなく巣の内部へと吸い込まれていった。
直後、巣の中から慌ただしく、かつ鈍い羽音が狂ったように響き渡り、逃げ場を失ったスズメバチたちが次々と出口から転がり出てくる。体中に薬剤を浴びたハチたちは、その場でもがき苦しみながら、ポロポロと音を立てて地上へと落下していった。
さらに、狩りから戻ってきた知らずの「戻りバチ」たちに対しても、一瞬の隙も見逃さず容赦なく薬剤を浴びせかけて無力化する。
丁寧な間引き作業に時間をかけたその戦略が功を奏し、今回の駆除はわずかな油断も許さぬ状況でありながら、結果として一瞬にして完璧な勝利で幕を閉じた。
数本の太いアサガオのツルに頑丈に絡みついていた巣を、ツルごと綺麗に切り落とし、跡形もなく専用の回収袋へと収める。巣を取り去った跡地には、アサガオの葉の隙間にぽっかりと穴が開いたような空間が残された。
「いやはや、ツル科植物の繁殖力は本当にすごいものだな……。きっとまたすぐに、この柵を覆い尽くしてしまうことだろう」
しかし、私の仕事はこれで終わりではない。
ふと見れば、ご自宅の周辺の壁面には、今回と同じような園芸用の柵やトレリスが何箇所か立てかけられている。スズメバチに限らず、こうした適度な隙間や隠れ場所は、アシナガバチにとっても好都合な格好の営巣地になりやすい。
さらに、庭を取り囲むように植えられている針葉樹の総称である「コニファー類」の豊かな垣根。この密生した樹木の内部もまた、ハチたちが好んで身を潜める危険なスポットだ。
「自分がハチ退治に来たプロだからこそ、家の周りに別の巣を見落としていたら洒落にならない!」
私は気を引き締め直し、再び防護服のジッパーを上げ、検索棒を片手に、ご自宅の建物の周囲を文字通り「徹底的」に捜索し始めた。





植え込みの奥底に這いつくばるようにして潜り込み、時には脚立を使って高い位置の枝葉の隙間まで、樹木の隅々をライトで照らしながら一つ残らず調べ上げていく。
緊張の捜索を終え、すべてのチェックをクリアした結果――。
奥様が仰っていた通り、今回が初めての営巣だったようで、幸いなことに新しく作られた別の巣はもちろんのこと、過去の古い巣の跡すら一切見当たらなかった。
第四章:安心の笑顔と、キンキンに冷えたご褒美
「奥様、お待たせいたしました! もう大丈夫ですよ!」
私は防護服のマスクを外し、爽やかな笑顔をつくって奥様に声をかけた。
「家の周りも、コニファーの垣根の裏からトレリスの隅々まで、もうこれ以上ないというほど徹底的に調べ上げましたが、他の巣は一切見当たりませんでした。念のため、今後また他のハチが寄ってこないように、怪しげなスポットにはすべて強力な忌避剤をたっぷりと散布しておきましたからね。もう安心してください!」
私のその報告を聞いた瞬間、奥様の顔にパッと心からの笑みがこぼれ、肩の力が一気に抜けたのが分かった。
「本当ですか……! よかったぁ……。はじめは『ついに我が家にもスズメバチが……』って、どうしたらいいか分からなくて本当にショックだったんですけど、中山さんにこうして完璧に対応していただけて……。それに、今後家で気をつけるべき予防策まで丁寧に教えていただいて、本当にありがとうございます!」
「いえいえ、今回のスズメバチはアサガオの茂みが格好の隠れ家になっていたんです。これからは時々、茂みの隙間を少しだけ覗いて風通しを良くしてあげるだけでも、大きな予防になりますからね。ぜひ試してみてください!」
すべての片付けを終え、機材を積み込んで車に乗り込もうとした、まさにその時だった。
「あ、中山さん! ちょっと待っててくださいね!」
奥様が慌てた様子で家の中に小走り戻り、戻ってきたその手には、キンキンに冷えたペットボトルが握られていた。
「これ、よかったらどうぞ飲んでください! ずっと暑い中で作業していただいて、本当にありがとうございました……!」
「うわぁ……ありがとうございます! ちょうど喉がカラカラに渇いていたところなんです。さっそくいただきますね!」
受け取ったペットボトルを傾けると、火照った身体に冷たい水分が染み渡り、乾ききった喉が最高に潤っていくのを感じた。生き返るような心地よさだ。
助手席に座り、車窓から空を見上げると、真夏の容赦ない太陽の光がアスファルトを照らしつけ、顔がヒリヒリするほどのまばゆい輝きを放っていた。
「今日も、また一段と暑い一日になりそうだな……!」
しかし、私の心は不思議と心地よい達成感と清々しさに満たされていた。
次なる現場で怯えている誰かのもとへ駆けつけるため、私は冷たいお茶の余韻を胸に、貝塚市の街をあとに静かにエンジンをスタートさせた。
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